田舎に移住してずいぶん経ち、子供もすっかり方言が身につきました。
「思えば遠くにきたもんだ」と思っていましたが…私なんかおよびもつかないぐらい人生が変わった友人がいたことを思い出しました。
子供なんか産まなきゃよかった
彼女は私が結婚していた頃同じ町に住んでいた女性。
私の長女と彼女の次女の年が同じということで公園などで会えば良く話していたのですが、とても控えめで声が小さく、優しい人でした。
ある時、だんだん彼女が痩せていくことに気付いた私は
「痩せたね♪いいなあ」
と能天気なことを言ったところ、
「お金がないのに、子供たちの食べる量が増えて・・だから私が我慢してる」
と言いにくそうに言い始めたのです。
よくよく聞いてみると、彼女の旦那さんが家にお金を入れなくなってきたそうで、経済的にかなり苦しい状況にいるということでした。
「大変だね・・ごめんね、ノンキなこと言って」
と謝る私に、
「ううん。でもさあ、子供とか産まなきゃよかったなって思っちゃう時もある」
と寂しく笑う彼女に、私はそれ以上何も言えませんでした。
それから間もなく私はフルタイムで働くことになり、彼女とは顔を合わせることがなくなっていました。
一年ぐらいした頃、近所のファーストフード店に入ると、制服を着てテーブルを拭いている彼女が。
「久しぶり!ここで働いてるの?」
と言う私に、
「うん、けっこう楽しいの」
と元気そうに笑う彼女に私もなんだか嬉しくなりました。
(家庭の方は解決したのかな・・)
と思いつつ帰宅したことを覚えています。
しばらくして私は田舎に移住することになり、彼女のこともすっかり忘れていました。
雑誌に載ってる!
ある時、何気なく手に取った雑誌の記事をみて私はとても驚きました。
「あの人だ!」
その記事には、あの彼女があれから会社を立ち上げたことと、そこに至るまでの道のりが。
「あのおとなしい人が、社長さんなんだ・・!」
彼女は夫から経済的に苦労をかけられてきたばかりでなく、暴言もひどかったと、そこには書かれていました。
激やせしてしまうほど悩み、それでも子供のために我慢しようと耐えていたそうですが、その夫が長年不倫もしていたことがわかった時ついに離婚を決意。
別れてからは昼夜かけもちのアルバイトで子供を養っていたそうです。
ある時、
「これはきっと主婦の助けになる」
と思いついたアイデアをもとに起業し、いまでは従業員を何十人も抱える会社に成長。
ファーストフード店のアルバイトで知り合った、ひとまわり年下の彼と子連れ再婚もしています。
「私はもう子供は産みたくない。あなたの子は持てないけど、いい?」
と聞いたところ、
「君の子供がいるからいい」
と言ってくれたそうです・・!
記事の写真の彼女は堂々としていて、その笑顔は太陽のようで、もう別人のようでした。
私はその記事にただただ驚いて、
「ヘーーーー!!あの人がねえ」
と繰り返すばかりでした。
そして、なんだか無性に嬉しい気持ちがあふれて仕方がなかったです。
離婚が彼女を変えたのか、それとも本当はすごく強い人だったのかはわからないけれど、人の人生って本当にわからないものです。
彼女の場合、彼女と一緒に会社を立ち上げた人、彼女と再婚した彼、たくさんの人の人生も変えてきています。
今もときどき雑誌で見かける彼女はもう私のことなんて覚えていないでしょうし、連絡を取る気はありません。
でも、私はずっと遠くから応援していくつもりです。
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