会社に歓迎される人物像を考えた時、私には思い浮かぶ人が二人います。

私が会社に勤めていたときに一緒に働いていた女性です。

仮にチホちゃんとエツコさんと呼びます。

イタリア帰りのチホちゃん

私が勤めていた会社は田舎でも奥まったところにあったため、いつも事務アルバイトさんの確保に苦労していました。

ある時応募してきてくれたチホちゃんはイタリアで十年以上デザインを勉強していた女性で、私たちの会社が日本で初めての仕事経験。

パソコンはメールがやっと、ビジネスマナーなど全然わからないどころか敬語もなんだか変。

私を含め、同僚も面接でかなり不安を感じたようですが、社長が

「うまくやってくれる気がする。この子を雇ってみようよ」

と言ったので、来てもらうことになりました。

皆が思った通り、チホちゃんは相手先にタメ口で話してしまったり、文字の大きさが途中から急に大きくなったメールを送ったり、相手の名前を間違えまくったりして、私たちのほうが青ざめることもしばしば。

それでもチホちゃんは同じ失敗は繰り返さないように努力をし、いつもニコニコしていました。

気がつけば、ワードもエクセルもずいぶん使いこなせるようになっていて、陰での努力を感じたものです。

汚れ物の片付けを進んでやってくれて、指示には素直に従ってくれる誠実な彼女がみんな大好きになりました。

チホちゃんは二年ほど私たちの所で働いてくれたあと、次はフランスで勉強をしたいといって辞めて行きました。

退職の挨拶としてまんじゅうを置いて去っていくチホちゃんの後ろ姿を見ながら

「いやーわからないものだよね。一緒に働きやすい人だった」

と同僚と話したことを今でも覚えています。

 

デキる女、エツ子さん

チホちゃんの次に来てくれたのがエツ子さん。

エクセル、ワード、パワポもできて、前の職場では責任ある立場についていたと面接で語っていた彼女は即採用になり、私たちもとても期待していました。

エツ子さんは予想通り頭もよく能力も高い人でした。

でも「もっとこうしたらいいのに」「どうしてこんなやり方を?」と思った時は、私たちの仕事の手を止めさせてでも納得するまで離してくれないのには閉口しました。

指示されていないのに、作業の改善案を何時間もかけてパワーポイントを使いプレゼンを作っていたこともあり、エツ子さんはだんだん私たちの中で「めんどくさい人」になっていきました。

ある日、社員がエツ子さんに送った何気ないメールの口調に腹を立てたことがキッカケとなり、今までの不安を爆発させたエツ子さんは

「私は大事にされていない!!」

といって、会社に来なくなってしまいました。

繁忙期にいきなり欠員が出たことで、そのあとはとても苦労したことを覚えています。

スキルは低かった、でも・・

チホちゃんはデザイナーとしての活動もしていたので、そのために連休をとることもあったり、敬語は最後までちょっと変だったりと、普通に会社としてみれば優秀な人ではないのかもしれません。

しかし、職場の雰囲気を明るくし、リラックスして仕事をしやすい職場に貢献していたことは間違いありませんでした。

決してそういうそぶりは見せなかったものの、早くパソコンを覚えて向上しようという努力も誰もが評価していました。

また、普段の様子から誠実な人柄だということはわかっていましたので、「辞める時は前もってちゃんと言ってくれるだろう」「時期を見計らってくれるだろう」という安心感も。

この対照的な二人と一緒に働いた経験はとても勉強になりました。

 

「なくてはならない人」になろう

私たちが仕事のことを考えた時にいう「会社」とは、建物のことではなくそこで働く人たちを指します。

高度なスキルや経験のある人はもちろん魅力的ですし、希少性のあるスキルや難易度の高い資格のある人なら多少人柄に問題はあっても目をつぶってもらえます。

でも、やはり会社が一番嫌うのは「人とうまくやっていけない人」です。

人間関係のトラブルを起こしたり、自分勝手なことをする人はいわゆるデキる人であっても、仕事の妨げになります。

このことは、社内不倫の多くが罰則の対象となることからもわかります。

 

 

私が20代のころ働いていた職場でも、管理職が派遣会社に人を頼む時は、いつも「モメない人にしてね」と言っていました。

今思えば「モメない」ということには、性格が明るいとか優しいとかだけでなく、自分勝手なことをしないとか、誠実であるということをすべて含んでいたような気がします。

人が人と連携して働いている限り、このことが大事なのは変わらないのではないでしょうか。

 

子供のことで休んだり、遅れたりということで引け目を感じがちなシングルマザーの私たちですが、このことがよくわかっていれば「職場にとってなくてはならない人」になることは十分可能です。

こういう人は案外少ないので、会社も離したがらないのです。